A.P.238 2/20 13:00

キャンプシップ内。テレパイプルーム。
一人の青年が立っていた。
セミナリオントールという耐熱耐圧加工を施された白衣を着込み、腰に装着したグレネードベルトにはグレネード弾のかわりにフォトンセルを挿している。
髪型は外ハネアシメの黒髪。青年というわりには、幼い印象を受ける顔に落ち着いた色合いの橙色瞳。
青年は、おもむろに外付けのレッグポーチからオレンジのゴーグルを取り出し、掛ける。
オレンジのゴーグル越しの青年の視界に、様々な情報が空中に展開、投影される。
「シレジアさん。現在の状況を教えてください」
青年が誰ともなくつぶやくと、目の前にホログラムによって、どこか頼りない雰囲気をもつ情報管理官の少女が映し出された。
《「えぇと・・・現在、緊急警報発令より三時間が経過していて・・・修了試験中のアークス候補生は避難が終了しています。・・・ですが複数の場所に依然、ダーカーが出現し続けているので、その対処に人員を割いている状態です」》
様々な情報が次々と青年のゴーグルにポップアップしていく中、ひときわ大きく、ダーカー達とアークス達の戦闘状況が映し出される。
その中に、青年が知っている人物達も映っていた。
青年はその映像を拡大し、指し示す。
「現在戦闘中のゼノさん達のパーティーに、合流できますか?」
《「え、パーティーですか・・・? あ、と・・・、少しお待ち下さい・・・」》
情報端末を探る動作をした少女から、青年の視界へ新しい情報が送られてくる。
《「あ、はい! 合流可能です」>
「では、ゼノさんのところへお願いします」
《「了解です・・・。パーティー申請を行います」>
そう言い、少女のホログラムは掻き消えた。
青年は、ゴーグルを一旦外してレッグポーチに収納し、自分の前方を見つめる。
通常のテレパイプとは異なる転送ゲート、通称、テレプールが水面に緑と青の調和した惑星を映し出している。
青年はテレプールの縁まで歩み寄る。
「『call』ディオアーディロウ」
ぽつりと呟く青年の背に、一振りの大剣が光と共に出現した。
青年の身の丈よりも長い大剣は、柄と鍔が一体化しているが、その先に刃が存在していない。
手元は、柄から柄尻までを覆うようなナックルガードというよりも盾と呼ぶべき大きさの頑強な合金板によって保護されている。
青年は、ディオアーディロウの柄を握り背中から引き抜き、柄の根本の平たい部分を指で軽く二回、叩く。
すると、その部位のパネルがスライドし円筒状の装填孔が現れた。
青年が腰のフォトンセルを一つ引き抜き、装填孔に手のひらで押し込むと、示し合わせたように寸分狂わずフォトンセルは挿入され、パネルが元に戻る。
フォトンセルから濃密度のフォトンが供給され、ディオアーディロウの内部に流れ込むことによって赤いフォトンが噴出、集束、刃先が二つに分かれた刀身を形成し赤黒い光を放ち始めた。
その形状はソードブレイカーと呼ばれる相手の剣を折る用途に使用される剣に近い。
「・・・フォトン充填完了。フォトン出力・・・形成機構、問題無し」
呟きながら刀身を確認した後、両手で柄を握りなおし、剣先が地面と平行になるように後ろ手に構えなおした。
戦闘体勢万全の青年の耳に、情報管理官の少女の声のみが響く。
《「パーティー申請受諾確認しました。以降のオペレートは該当パーティーの情報管理官へ引き継ぎますね・・・。テレプール座標セット! 転送準備・・・完了しました!・・・ご武運を!」》
「ムイカツキ。戦闘行動を開始します」
青年。ムイカツキは、倒れこむようにその身を、緑の惑星が写し出された水面へ投げ出した。
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